惨劇山脈~ヒグマ襲撃~が突きつける現実

ヒグマ被害が生活圏に拡大 ― 北海道・東北で深刻化する現実

北海道や東北でヒグマによる人的被害が急増している。登山者やキャンプ客が襲われるニュースは珍しくなく、農作物被害や市街地への出没も報告され、生活圏への侵入が深刻化している。こうした現実の恐怖が、人々の関心を「自然の脅威」へと向けているのは間違いない。その証拠が、ヒグマを題材にした漫画の人気だ。佐伊村司によるパニックホラー漫画「惨劇山脈~ヒグマ襲撃~」(秋田書店)。10月20日週に発売された青年コミックジャンルの第1巻目ランキングで8位に入り、注目を集めている。

牙と爪の破壊力を描く ― 極限サバイバルのリアリティ

物語は、大学生の勇二と仲間が北海道でキャンプを楽しむはずが、血に飢えたヒグマの襲来で地獄と化すというもの。仲間が次々と犠牲になる描写は、牙と爪の破壊力を生々しく伝える。作者は「東京アンデッド」(徳間書店)、「惨劇海域」(日本文芸社)など極限サバイバルを描いてきたが、本作はゾンビや鮫ではなく、現実に存在する脅威を題材にしている点でより恐ろしい。

CANTERA分析画面②(購入クラスタ分析 CANTERA調べ)

「惨劇山脈」の読者層と併買率38%のコミックとは⁉

現在の読者層にも特徴がある。男女比率は85%:15%で男性が多く、平均年齢は52歳。55歳以上にも読まれているコミック作品は数多くはない。また、購入者の併買傾向を直近半年間で見ると、「ヒグマグマ 4巻」奥谷通教(日本文芸社)が38%で断トツの1位。つまり、「惨劇山脈」購入者の約4割が同じくヒグマを題材にした作品を読んでいることになる。
「ヒグマグマ」は、さらにスケールを拡大し、怪物級ヒグマと人間同士の殺意が交錯するサバイバルホラー。両作品は「自然を甘く見るな」という警鐘を鳴らし、恐怖を疑似体験させることで危機管理意識を促している。そんな「ヒグマグマ 4巻」の併買作品を見てみると「クマ撃ちの女 15巻」安島薮太(新潮社)もランクイン。
「クマ撃ちの女」はリアル狩猟ドラマ。主人公は経験豊富な猟師で、銃器や雪山の描写は実際の狩猟文化に基づく。恐怖演出よりも、命の重さや自然との共存、狩猟倫理をテーマにしており、現実的な知識を学べる作品だ。「惨劇山脈」「ヒグマグマ」に共通して併買されている作品に「怪獣自衛隊」井上淳哉(新潮社)も含まれていた。
異なる角度から「巨大な脅威」を描くのが「怪獣自衛隊」だ。怪獣というフィクションを通じて、日本社会が未知の災害にどう対応するかをリアルにシミュレーションする。自衛隊の戦術、政治判断、国際関係まで緻密に描かれ、読者は「もし現代日本に怪獣が現れたら」という究極の問いに向き合う。怪獣は非現実的だが、災害対応や危機管理というテーマは現実と地続きだ。
現実のヒグマ被害が増える今、いずれも自然との境界線を問い直す作品であり、恐怖をエンタメで消費するだけでなく、私たちは「備える」という選択を学ぶことができる価値がある作品たちとなりそうです。

CANTERA分析画面③ (「惨劇山脈~ヒグマ襲撃~」併買分析 CANTERA調べ)
CANTERA分析画面③ (「ヒグマグマ4巻」併買分析 CANTERA調べ)

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