3000%⁉受賞の瞬間から売上急増する本屋大賞の驚異的な効果

売り場からベストセラーをつくる!2025年本屋大賞ノミネート作品
今年で第22回目となる本屋大賞。紙の出版市場は書籍、雑誌とも年々縮小傾向にありますが、 そんな状況の中でも、売れる本を作っていく、出版業界に新しい流れをつくる、ひいては出版業界を現場から盛り上げていきたいと設立された同賞。新刊書の書店で働く書店員さんが自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票されます。そして今年も一次投票が昨年12月1日から1月5日まで全国の書店員さんによって行われ、2月3日にノミネートされた10作品が発表されました。

今回のコラムでは、この本屋大賞による効果を確認していきます。まずは、ノミネート発表による売上効果について見ていきましょう。今年の本屋大賞は、2023年12月1日から2024年11月30日の間に刊行された日本の小説の中から選ばれるため、比較的新しい作品もあれば、発売から1年近い作品も含まれています。そこで、「発売日からノミネート発表までの期間を30日換算した販売数」と「ノミネート発表から30日間の販売数」を比較してみました。この比較により、ノミネート発表が売上にどのような影響を与えるのかを確認します。
本屋大賞の威力:ノミネート作品の売上効果を検証
「成瀬は信じた道をいく」宮島未奈(新潮社)は、24年1月に発売されましたが、前作が同年4月に本屋大賞を受賞したこともあり、そのタイミングで一気に売上が増え、ノミネート発表後との比較では売上伸長率53%となりました。ノミネート発表後でも理由があって、100%を下回る作品もありますが、10作品合計の伸長率は150%の効果を記録しています。その中でも最も伸長率が高かったのが、「カフネ」阿部暁子(講談社)です。この作品はノミネート発表後に1187%という驚異的な売上を記録しました。本屋大賞初ノミネートの著者であることから、ノミネートをきっかけに初めて手に取った読者も多かったのではないでしょうか。続いて、「小説」野崎まど(講談社)、「アルプス席の母」早見和真(小学館)が高い伸長率を示しています。このように、本屋大賞にノミネートされることで、売上に効果があることが確認されました。特に初ノミネートの著者にとっては、新しい読者にリーチする重要な機会となっていることがわかります。

ノミネートを勝ち抜く!本屋大賞の驚異的な効果
記憶に新しい2024年の本屋大賞受賞作品「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈(新潮社)、「汝、星のごとく」凪良ゆう(講談社)、「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬(早川書房)を含めた過去作品の大賞発表後の売上効果を調査しました。これは、「発売からノミネート前の期間の30日換算」と「大賞発表後の30日の期間」を比較したものです。その結果、全体の売上伸長率は1200%に達しました。「成瀬は天下を取りにいく」に至っては、驚異的な3000%の売上効果を記録しました。これにより、本屋大賞の影響力の大きさが改めて証明されました。果たして、今年はどの作品が大賞を射止めるのでしょうか。今年の大賞発表は4月9日です。著者も出版社も書店員も、そして読者も注目の発表まで、あと2週間です。
