驚愕の売上効果は12000%⁉本屋大賞の圧巻の影響力

25年本屋大賞の大賞受賞作品「カフネ」の実績
25年の本屋大賞の大賞発表から1か月が経ちました。大賞を受賞した阿部暁子の「カフネ」(講談社)は、どれほど多くの人々に読まれたのでしょうか。今回は、その売上効果に迫ります。
以前のコラム3000%⁉受賞の瞬間から売上急増する本屋大賞の驚異的な効果でお伝えしたように、ノミネート後の売上伸長率は、1位が「カフネ」、2位が「小説」野崎まど(講談社)、僅差で3位に「アルプス席の母」早見和真(小学館)、4位が「禁忌の子」山口未桜(東京創元社)という結果でした。本屋大賞上位の順位は、2位と3位が入れ替わっただけで、この伸長率順位とほぼ一致しており、興味深い結果となりました。24年大賞受賞の「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈(新潮社)は、大賞受賞後に3000%の売上効果を記録しましたが、今回の「カフネ」はそれを大きく上回り、ノミネート前と比較すると12000%という驚愕の売上効果を達成しました。

「カフネ」にみる本屋大賞が後押しする読者層の変化
文芸書ジャンルの平均的な購入者の男女比は4:6ですが、「カフネ」の購入者は3:7と、女性の構成比がより高い傾向にあります。また、年代別では文芸書ジャンルの一般的な読者は45~54歳がメインクラスタで、55歳以上の購入者は減少する傾向にありますが、「カフネ」においては69歳までそのピークが続いています。下図、大賞発表前と発表後の購入クラスタを比較すると、大賞発表を機に60歳以上の購入者、特に女性が増加していることがわかります。「カフネ」が幅広い年代に支持されていることは、作品の魅力と本屋大賞の影響力を示しています。

(購入クラスタ分析/パーセント表示 CANTERA調べ)
「カフネ」購入者の併買傾向から本屋大賞の影響力を探る
「カフネ」の購入者が他に購入している書籍を期間別に調査しました。本屋大賞ノミネート以降は、やはり本屋大賞にノミネートされた文芸書がTOP10のうち7割を占めています。大賞発表後のランキングでは、「アルプス席の母」早見和真(小学館)が1位、「禁忌の子」山口未桜(東京創元社)が3位、「人魚が逃げた」青山美智子(PHP研究所)が8位にランクインしました。本屋大賞のランキングが購入の指標となっていることがうかがえます。さらに、6位には阿部暁子さんの文庫「金環日蝕」(東京創元社)もランクインしました。この作品は本屋大賞発表の翌日には市場在庫が2.5倍に増加し、売上効果も450%と大きな効果を発揮しています。
この調査結果から、本屋大賞の大賞発表後のランキングや大賞の著者作品が、読者の購入行動に大きな影響を与えていることがわかります。読者はランキングを参考にして、新たな作品との出会いを楽しんでいるようです。
