出版社の垣根を越えて 本好きの心に刺さる本と人の物語
「本との偶然の出会い」を描く、珠玉のヒューマンドラマ
作者・児島青による初連載とは思えないと話題の「本なら売るほど」(KADOKAWA)。2025年に発売となった第1巻目のみの売上ランキングで現在第2位。1位は「ザ・ファブル The third secret 1」南勝久(講談社)の続編であることを考えると、オリジナル作品としては実質第1位。第3位のタイトルに2倍近い差をつけており、2025年を代表する話題作となっています。
舞台は古本屋「十月堂」。訪れる客たちは、悩める女子高生、亡き夫の蔵書を売りに来た未亡人、常連の本好きなど、人生の節目に立つ人々。彼らがふと手にした一冊の本を通じて、心の交流や再生が描かれます。
本屋に入ると便意を催すという「青木まりこ現象」に触れたり、「読書が苦手でも本が好き」といったキャラクターも登場し、本好きの多様性を肯定する姿勢が共感を呼んでいます。古書業界の裏側や出版流通の現状にも触れながら、児島青の深い教養と繊細な感性が光る作品です。
読者層は“大人の本好き”──ライフスタイルに寄り添う作品性
購入者の平均年齢は47歳、男女比は34%:66%と女性比率が高め。美術・アート・手芸・料理などへの関心が高く、天然素材や野菜を好む自炊派が多い傾向です。
併買データからも、洋酒チョコシリーズやチョコレート効果、クリーム玄米ブラン、アーモンド効果、カゴメトマトジュース、キッコーマン豆乳飲料など、健康志向かつ“ちょっと贅沢”な嗜好が見えてきます。
「本なら売るほど」は、内面を大切にする大人の読者に寄り添う作品なのです。。
(性年代分布 AND ONE調べ)
(読者層レポート AND ONE調べ)登場する名著が、読者の“次の一冊”を導く
作中には、実在する名著が多数登場します。第1話「本を葬送る」では、亡くなった人物の蔵書として「やし酒飲み」エイモス・チュツオーラ(岩波書店)が象徴的に登場。1952年刊行のアフリカ文学の傑作で、現在は岩波書店から文庫として発売されていますが、2025年1月の「本なら売るほど」発売以降、売上が2〜3倍に伸びるという現象が起きています。
こうした名著は、登場人物の心情や人生の転機を象徴する存在として描かれ、読者に「読んでみたい」と思わせる力を持っています。
まさにこの作品は、出版社の垣根を越えて、名著の“再発見”を促す文化的貢献者。
出版業界の未来を明るくしてくれています。
(売上月別推移 /「やし酒飲み」エイモス・チュツオーラ(岩波書店)CANTERA調べ)
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